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旭川地方裁判所紋別支部 事件番号不詳 判決

主文

被告人天内善導を懲役一年に処する。

被告人渡辺学を懲役一年六月に処する。

被告人中保三郎を罰金一万円に処する。

被告人上田四郎を懲役一年に処する。

但し、被告人天内善導及び上田四郎に対しては、この裁判確定の日から各四年間右刑の執行を猶予する。

被告人中保三郎が右の罰金を完納することができないときは金四百円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。

被告人上田四郎から金十六万円を追徴する。

訴訟費用中証人荒茂、同小野寺義夫、同〓幸雄、同義達文俊に支給した分は被告人上田四郎の負担とし、証人如沢次郎、同杉本一二に支給した分は被告人渡辺学の負担とし、証人柴田繁一に支給した分は被告人天内善導、同渡辺学の連帯負担とする。

なお、本件公訴事実中、被告人上田四郎が昭和二十七年五月下旬頃被告人渡辺学から金八万円を収賄し、被告人渡辺学が被告人上田四郎に右金八万円を贈賄したとの点(昭和二十八年八月十九日付起訴状第一(三)及び第二(三)の点)及び被告人中保三郎の業務上横領の点につき同被告人等はいづれも無罪

理由

(罪となるべき事実)

被告人上田四郎は総理府技官で、北海道開発局網走開発建設部開墾建設課開拓建設係長として開墾工事の設計及び実施に関する事務殊に各年度毎の上申手続を担当していたもの、

被告人天内善導は紋別郡雄武町所在、雄武町開拓農業協同組合の組合長として事務一切を統轄していたもの、

被告人渡辺学は同組合参事として、組合長を補佐し、前記網走開発建設部との間に組合管下各地区の開拓工事を施行するについて請負契約を締結するための陳情を含む庶務会計等事務全般を直接監督していたものである。

第一、被告人上田四郎は、

(一)  昭和二十七年一月二十一日札幌市北八条西四丁目表原三吉方において被告人渡辺学に対し、当時自分が作成整理しつつあつた前掲組合に請負わせる予定の昭和二十七年度開拓工事概要書を北海道開発局に提出するに当り、その上申につき努力する事の対価として金二万円の提供方を要求し、よつて同月二十二日同人の指示に基き右組合より金二万円を右表原方に電報送金させ、

(二)  同月二十九日紋別郡雄武町の被告人渡辺学方に、前記概要書完成に対する謝礼の意味を以て、金五万円の送金方を札幌より打電して要求し、同月三十一日同人より札幌市所在北海道拓殖銀行本店宛に送金させ、

(三)  同二十八年四月五日頃、前記開墾建設課事務室において、被告人渡辺学に対し、偶々当時議会解散に基き暫定予算に合致する開拓工事の実施設計書を作成、これを北海道開発局に提出することになつた為め右設計書作成並びに上申に努力することの対価として、同課技官〓幸雄をして「設計書を札幌に携行するから四万円頼む」と申込ませて、その提供方を要求し、同月六日同課事務室において被告人渡辺学より現金四万円を受取り、

(四)  同年六月二十九日網走市菅原旅館に宿泊中の被告人渡辺学に対し昭和二十九年度開拓工事予算要求資料を前記開発局に携行するに当り、右資料中に組入れた組合管下沢木地区暗渠排水工事実施上申について努力する為の対価として、同課技官山野寺義夫をして「昭和二十九年度の工事予算要求資料を開発局に携行するから五万円都合たのむ」と申込ませてその提供方を要求し、被告人渡辺学より同月二十九日札幌市北八条西四丁目表原三吉方に電報為替で金五万円を送金させて、これを受取り、以て夫々職務に関し賄賂を収受し、

第二、被告人渡辺学は、

(一)  昭和二十七年一月二十一日札幌市北八条西四丁目表原三吉方において被告人上田四郎より前記第一、(一)記載の趣旨の下に金二万円の提供方を求められるや、これを諒承し、同月二十二日前記組合に打電して金二万円を前記表原三吉方に電報為替を以て送金させて被告人上田四郎に贈与し、

(二)  同月二十九日被告人上田四郎より金五万円の送金依頼をうけるや、前記第一の(二)記載の趣旨の下に提供方を求められるや、これを諒承して同月三十一日北海道拓殖銀行雄武支店取扱にて、札幌市所在の同銀行本店宛受取人上田四郎として送金して贈与し、

(三)  同二十八年四月五日頃同課事務室において、被告人上田四郎より同課技官〓幸雄を介して前記第一の(三)記載の趣旨の下に金四万円の提供方を要求されるや、これを諒承し同月六日右同課内において、現金四万円を被告人上田四郎に贈与し、

(四)  同年六月二十九日頃網走市菅原旅館において被告人上田四郎より同課技官小野寺義夫を介して前記第一の(四)記載の趣旨の下に金五万円の提供方を求められるや、これを諒承して同月二十九日札幌市北八条西四丁目表原三吉方に電報為替にて金五万円を送金して、被告人上田四郎に贈与し、

以て夫々被告人上田四郎の職務に関し賄賂を供与し、

第三、被告人渡辺学は昭和二十七年十二月八日頃北見市三条一丁目北海道拓殖銀行北見支店内北見支金庫事務所において、同組合の昭和二十七年度第二期分入殖者住宅建設道費補助金百八万円を受取り業務上保管中、その頃網走市内においてほしいままに二十四万円位を着服横領し、

第四、被告人渡辺学、同天内善導は共謀の上、被告人両名において業務上保管中の前記補助金の内金五十万円を被告人天内善導の個人的用途に供するため、同月二十日頃被告人天内善導肩書住居において、ほしいままに被告人渡辺学より被告人天内善導に交付し、被告人天内善導はこれを受領して以て横領し、

第五、被告人中保三郎は、法定の除外事由がないのに拘らず、昭和二十七年五月二十日頃、粳精米五俵を紋別郡雄武町雄武農業協同組合事務所から同町栄町小林信恵方まで運搬し、

たものである。

(証拠の標目)

判示冒頭の事実

一、北海道開発局地方部局処務細則

一、網走開発建設部事務分掌

一、網走開発建設部長作成の開拓建設係の職務内容についてと題する書面

一、第三回公判調書中証人荒茂の供述記載部分

一、雄武町開拓農業協同組合登記簿謄本並に同組合定款謄本

一、被告人渡辺学の検察官に対する第一回供述調書

判示第一並に第二の事実

一、被告人上田四郎の検察官に対する第一回乃至第三回供述調書

一、被告人渡辺学の検察官に対する第一回乃至第三回供述調書

なお第一の(一)並第二の(一)につき

一、押収にかかる検第一号証(昭和二十七年一月二十二日付建設工事仮払金二万円出金の雄武開拓農業協同組合出金票、及び同日付電信為替受領証書、表原三吉への送金電報料二百八十四円の前記組合伝票

第一の(二)並に第二の(二)につき

一、拓殖銀行雄武支店作成の回答書

一、前原正二の司法警察員に対する供述調書

一、押収にかかる昭和二十七年二月分証拠書類中、同月一日付通信費として二百五十円の判示組合の出金伝票

第一の(三)並に第二の(三)につき

一、〓幸雄の検察官に対する供述調書

一、米田あゆみ作成の答申書

第一の(四)並に第二の(四)につき

一、小野寺義夫の検察官に対する供述調書

一、斎藤武司、原谷妙子の司法警察員に対する供述調書

判示第三並に第四の事実

一、被告人渡辺学の検察官に対する第二回供述調書(業務上横領被疑事件)

一、被告人天内善導の検察官に対する供述調書

一、北海道網走支金庫の回答書

一、北海道北見支金庫の顛末書

一、網走支庁菅原吉正作成の顛末書

一、証人柴田繁一の当公判廷における供述

一、柴田繁一の検察官に対する供述調書

なお判示第三の事実につき

一、石山喜蔵、渡辺三郎、石井清蔵、米田賢策各作成の答申書

一、熊谷守、野川兼吉の司法巡査、大水徳雄、天内喜一の司法警察員に対する供述調書

一、被告人天内善導作成の使途内訳書

判示第四の事実につき

一、伊藤克衛、西垣秀松、西垣武彦、田原慎治各作成の答申書

一、証人杉本一二の当公判廷における供述

一、被告人渡辺学作成の使途内訳顛末書

判示第五の事実

一、被告人中保三郎の当公判廷における供述

一、被告人中保三郎の検察官に対する供述調書

一、小林信恵、天内善導の検察官に対する供述調書

(法令の適用)

被告人上田四郎の各所為は刑法第百九十七条に、被告人渡辺学の判示第二の各所為は同法第百九十八条、罰金等臨時措置法第二条第三条に、判示第三、第四の各所為は刑法第二百五十三条(判示第四につきさらに同法第六十条)に、被告人天内善導の所為は同法第二百五十三条、第六十条に、被告人中保三郎の所為は食糧管理法第三十一条、第九条第一項、同法施行令第十一条、同法施行規則第四十七条に、各該当するところ、被告人上田四郎並に同渡辺学の各所為は刑法第四十五条前段の併合罪であるから同法第四十七条本文、第十条により被告人上田四郎につき犯情重しと認める判示第一の(二)の被告人渡辺学につき刑並に犯情重しと認める判示第四の各罪の刑に法定の加重をなした刑期範囲内、被告人天内善導につき所定刑期範囲内並びに被告人中保三郎につき所定金額範囲内(罰金選択)において被告人渡辺学を懲役一年六月に、被告人上田四郎を同一年に、被告人天内善導を同一年に、被告人中保三郎を罰金一万円に処し、被告人上田四郎並に同天内善導の情状刑の執行を猶予するのを相当と認め、同法第二十五条により本裁判確定の日より四年間夫々右刑の執行を猶予し、被告人中保三郎において右罰金を完納することができないときは同法第十八条により金四百円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置し、被告人上田四郎が収受した判示各賄賂はいずれもこれを没収できないから同法第百九十七条の四後段により同被告人よりその価格合計金十六万円を追徴し、訴訟費用につき刑事訴訟法第百八十一条第一項本文(連帯負担につき同法第百八十二条)により証人荒茂、同山野寺義夫、同〓幸雄、同義達文俊に支給した分は被告人上田四郎の負担、証人如沢次郎、同杉本一二に支給した分は被告人渡辺学の負担、証人柴田繁一に支給した分は被告人渡辺学、同天内善導の連帯負担とする。

なお、本件公訴事実中、被告人上田四郎が昭和二十八年八月十九日付起訴状記載の公訴事実第一、(三)記載の如く、また同渡辺学が同第二、(三)記載の如く被告人上田四郎において被告人渡辺学から金八万円をその職務に関して収受し、被告人渡辺学において同八万円を供与したとの点は証人忠津正助、同天野治郎の各証言よりみてこれを肯定する証明に十分でなく、また被告人中保三郎に対する業務上横領事件については、起訴状記載の如く金銭を貸与したことは認められるが、同被告人において不正に領得する意思にもとづきなされたとの点を肯定するに足りる証拠がないので、結局右事実については犯罪の証明がないのでいづれも刑事訴訟法第三百三十六条により無罪の言渡しをする。

そこで主文のとおり判決する。(昭和二九年七月二〇日旭川地方裁判所紋別支部)

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